第四章

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 翌朝。  斥候の報告から蛮族の群れを発見したことで、王国騎士団に緊張が走った。  団長命令で全員に戦闘準備の号令が発せられ、騎士達は一斉に防具を纏い、武器を手にする。小隊長はその場で伝えられるだけの指示を出し、さらに騎士達を奮起させる。  そして団長不在の白凰騎士団を後衛にし、紅虎と蒼獅の騎士団が前衛を担当してやや横に長い陣を築く。 「士気が低い」  団長代理として指揮を執っているベルフォールから疎まれ、さらには白凰騎士団の陣の中に入ることを断られたデルは、最後方に部下と共に馬上で待機しながら目を細めた。 「見なくても分かるわ」  デルの横でフォースィがつまらなそうに言葉を返す。一晩経って1歳の成長を遂げた彼女は、紅の神官服を身に付けて立っている。  やや肩や胸回りに服の余裕さが残り、彼女自身不便そうに何度も服の位置を直しているが、昨日の服よりはマシだと強情になっていた。 「あれは白凰騎士団ね」「ああ、そうだ」  白凰騎士団の指揮は副長のベルフォールが務めているが、騎士達の動揺は大きく、陣を築いて待機している間も騎士達の頭が左右に動き、私語が絶えない。 「だからこその後衛か」  デルの独り言が続く。 「それで、あなたの仕込みは大丈夫なの? 夜中まで随分とこそこそしていたようだけど」  フォースィの目がデルに向けられると、デルは眉を上げて肩をすくめる。 「何それ」 「何とも言えないってことさ。予想通りになって欲しくはないし、予想通りなら上手くいって欲しい」  謎かけのような表現に、フォースィは理解しつつも怪訝な顔をして答える。  銀龍騎士団の1人が報告に戻ってきた。どうやら前線では蛮族達とのにらみ合いが続いているらしい。 「持久戦………じゃ、ないだろうな」  デルが戦場に間に合っている時点で、魔王軍も後方の補給地として使うはずだったゲンテの街が奪還されていることに気付いている。持久戦で不利になるのは魔王軍の方だということは相手も分かっているはずである。 「なら、何かを待っているのよ」  フォースィが空を指さした。  空には黒い影がいくつも見え始め、鳥の群れのように列をなしている。  
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