第四章

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「バードマンの群れ………何かを運んでいるな」  他の騎士達もバードマンの群れに気付き、次々と指を向けて目を細めた。 「ゴブリン? だが落下させるには高さがありすぎる」  デルがバードマンの背中に乗せている姿が見えた瞬間、音が響く。  そして白い鎧を着た騎士の1人がその場に倒れた。 「………やられたわね」フォースィの顔が険しくなる。  その一発で、白凰騎士団は大混乱に陥った。  ゴブリンが持つ音と光を放つ筒。それと同時に鉄球が飛び出し、騎士達を次々と貫いた道具を見てきた騎士達が次々とその場を離れ始める。始めは先日経験した騎士達だけの行動だったが、その動きに感化された者、噂や生き残った騎士から話を聞いていた者達も次々にその場を離れ始め、ものの数十秒で後衛の陣は瓦解してしまった。  それを狙い、バードマンに乗ったゴブリン達が一斉に筒から光と音を一斉に放つ。そしてバードマンが旋回している間にゴブリンが次の目標を定め、逃げ惑う騎士の背中に鉄球を浴びせていく。 「デル、ここにいても巻き添えを受けるだけよ」 「分かっている!」  デルは腰の剣を抜き放ち、空高く掲げた。 「銀龍騎士団はこれよりこの場を離れ、白凰騎士団の混乱を収めに回る! 正面はいい! 盾を使い、空からの攻撃にのみ対応しろ!」「「「「はっ!」」」」  白凰騎士団がまばらに弓矢で対抗しているが、バードマンの速さに狙いを合わせられず、そもそも弓の射程外から攻撃を仕掛けており、全く効果がない。  デルは自分の背中にフォースィを乗せると、僅か10騎程度の部隊で白凰騎士団の崩れた陣を馬で抜けていく。 「慌てるな! 10人単位で集団をつくり、盾を頭上に構えて対抗するんだ!」  デルが声を上げ、我に返れた者だけが動き始める。  フォースィはデルの背中から魔導杖を空に向けて風の塊を放つが、途中で風は霧散し、有効打を与えられない。 「フォースィ!?」デルが叫ぶ。 「大丈夫よ、この程度の魔法なら数には入らない。だけど私の攻撃魔法では、あの高さまでは届かないわ」  完全な一方的な攻撃。バードマンに乗ったゴブリンは空から自由に敵を選び、反撃されない場所から攻撃を続けている。  まさにこの空の全てが、彼らにとって城壁であった。
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