第四章

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 だがデル達の声掛けが少しずつ功を奏し、白凰騎士団の騎士達も集団で盾を組み始めた。傘のように上方に組んだ盾ば敵の鉄球を弾くことができ、ゴブリン達も狙える目標が狭まり始める。  そこで遠くから聞こえる大勢の声。 「始まったわ」  風で乱れる髪を抑え、フォースィが前線で動きがあったことをデルに伝えた。  距離は遠いが、前線でも高い音が何度も響き渡っている。恐らく突撃した騎士達も同じ武器で攻撃を受けているのだろう。 「どうするの!?」 「1人でも多くの騎士達を助ける!」  デルは後方で走る部下達に手で合図を送る。事前に指示が渡っているのか、黒銀の鎧を着た3人の騎士が陣形から離れて、別の方向に向かっていく。 「このままベルフォールの下へと向かうぞ!」  デル達は馬を走らせ、白凰騎士たちの間を抜けていく。前に出れば出るほど混乱は収束しており、空からの攻撃に備えつつ、陣形を再編していた。  そしてデルは声を荒げながら指示を出している金髪の騎士を見つける。 「ベルフォール!」  デルに名前を呼ばれたベルフォールは反射的に振り向いたが、その正体が分かるやすぐに顔にしわを寄せて不愉快な顔をつくった。 「何ですか! 今は戦闘中です!」  そもそも率いる騎士もほとんどなく、出番のない人間に用はない。そう言いたげな彼の顔に、デルは必死の形相を作って正面から言葉を放つ。 「後方では空からの攻撃を受けて騎士達が混乱し、負傷者も出ている。ここは空からの防御に徹しながら、混乱を収拾させることを優先させるんだ! 微力ながら俺も手伝おう!」  やや大袈裟ともとれるがデルは両手を広げ、後方の状況を訴えた。  ベルフォールが王国騎士団の理想の姿を『勝利し続けること』と信じて疑っていないことをデルは知っていた。そして、支援や救援と言った行動を疎かにし、かつ面倒がる性格であることも知っている。  そもそも後方に配置され、攻撃を受け続けて我慢できる性格ではない。機会を窺って一糸乱れぬ陣形で突撃したくてたまらないのだろう。だがその行動が自分の騎士団を、ひいては全騎士団を危険に晒されかねない。デルは何としても彼を止めようと必死に口を開けて言葉をぶつけた。
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