第四章

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 だがベルフォールは眉間にしわを寄せてデルを睨み返す。 「冗談ではない! 白凰騎士団は王国騎士団最強だ! シーダイン団長に代わって指揮する私が、その名誉を傷つける訳にはいかない!」  ベルフォールは舌を鳴らしてデルから顔を逸らすと、味方に向けて剣を掲げた。 「我々はこれより、蛮族達に突撃を敢行する!」 「待て、ベルフォール! 後方から勝手に騎士団を動かせば、前線が混乱する!」  デルは馬を近づけさせ、ベルフォールの腕を掴む。 「シーダイン騎士総長のことを想うのならばよく考えろ! あの方はそんな判断はしない!」 「お前に何が分かる!」  首を強く左右に振り、ついにベルフォールが激情する。 「貴族でもないくせに………シーダイン団長の傍付き騎士を任されたことがあるだけでも腹立たしいのに………ついには誉ある銀龍騎士団の団長だと? 特別扱いされるのもいい加減にしろ!」  今まで見たことがない剣幕に、デルは一瞬言葉を失った。 「………ベルフォール。何を言っているんだ? 俺は………」「実力だというのか!? 銀龍騎士団を壊滅させたお前には、何も言う資格はない!」  俺は違うと、ベルフォールは周囲の騎士達に号令をかけ、自らを先頭に一斉に馬を走らせていく。  デルは何も言い返せず、多くの騎士達を無言で見送った。 「見苦しいわね。男の嫉妬って」  デルの後ろで話に付き合わされたフォースィが口を曲げる。 「………デル」  大勢の騎士達が馬を走らせていく中、白い鎧を着た女性騎士がデルの雨で馬を止めた。白い兜から見える僅かな金色の髪、そして青い瞳がデルの目を直線状に繋ぐ。 「………その声はシエンか?」  デルは同期の騎士の名前を声に出した。彼女は貴族出身でありながら、自由な気風で育ち、デルだけでなくタイサとも分け隔てなく付き合い、共に時間を過ごしてきた。デルが団長になってからはやや疎遠になっていたが、彼女の姿は大人びたこと以外は昔と何ら変わらなかった。
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