第一章

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「隊長! 何持ってきてるんですかっ!?」 「食料だよ! これがないと困るだろうが!」  森の木々を避けながらタイサとボーマはカエデとエコーが待つ野営地まで走る。巨大野豚はその体格から木々を倒しながら進んでいくため、その速度は随分と落ちていた。 「隊長、自分はもう限界です!」  前に突き出たお腹を揺らし、ボーマは犬のように舌を出しながら大きく呼吸をしている。頭から腕に至るまで汗が吹き出し、そのまま干からびる勢いであった。 「もうすぐエコー達と合流する、頑張れ!」  そして最後の木と木の間を抜け、タイサとボーマは同時に茂みを飛び越える。 「た、隊長!?」「兄貴!?」  狩りに行っていた2人が慌てて戻ってきたことに、エコーとカエデは持っていたお椀をこぼしそうになった。 「「食料があるじゃないかぁぁぁぁ!」」  思わずタイサとボーマが指をさして同時に叫ぶ。  だがカエデは悪びれることもなく、不機嫌な顔になった。 「これは私達の分。兄貴達とは別にしておいたの」「………ぐぬぬ」  だがこれ以上ここに留まってはいられない。タイサは言いたいことを我慢しつつ、走って来た道を振り返る。 「ボーマ! 2人に説明しておけ、そして戦闘準備だ!」 「わ、わっかりましたぁぁ!」  地面の上にあおむけで倒れ、大きく息を切らしているボーマはタイサに向かって手を振る。  そしてタイサは棒に縛られた野豚を持ったまま再び走り出す。 「ちょ、ちょっと兄貴。それ今日のご飯じゃないの?」「カエデちゃん、危ない!」  タイサの進む先を覗いたカエデは、エコーに首根を掴まれて引き倒される。その瞬間。巨大野豚が通り過ぎ、カエデの手からこぼれた椀が、無残な姿で地面に沈む。
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