発端

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 もっとも、肉や魚などを持参してくる者が多い。果物はお供えのお下がりある。野菜は修行の一環として畑仕事をしてまかなっていた。  家の光熱費は展示会場の必要経費として計上している。税務署に突っ込まれるような誤魔化しは、今のところない。  白骨が見つかった畑で野菜を収穫していた。畑はどうなっているだろう。その畑で穫れた野菜が食卓に上ってきたらどうしよう。  余計なことを考える。  その前に。 「志真の身元は調査してある?」 「夫と子どもを同時に失った傷心の果てに、フウ先生の下にたどり着いたらしいです」 「ワケアリか」 「じゃないと出家のような生活、しませんって」  志真の出身地は東京だ。実家近くの大学に通っている。就職で地方に引っ越していた。  警察が調べた志真の経歴はキレイなものだった。悪事を働くような性格でもない。  だが宗教に関与している家で宿泊修行のような真似をしている。その家が所持している畑から遺体が出た。通り一遍調査して瑕疵が見えてこないなら、内部に踏み込まねばなるまい。 「どこかで殺して来た犯人が、目につけておいた畑に埋めた。それっぽい気がしますが」 「思い込みは危険だよ鳴也君。世の中には摩訶不思議なことがいっぱいあるんだからね」 「それを訊くと、解決できなさそうな事件が増えそう、です」 「魑魅魍魎が起こした事件なら解決はムリ。だけどしょせん人間の仕業だしさ」  解決できる。  解決しに行く。  親指を立て、笑って出かける。
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