潜入

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「今回、間近でお話を伺えるので、楽しみにしています」 「な~に言ってんの。千早さんのほうがたくさん相談内容を話すんでしょうが」 「もちろんそうさせていただきます。でも、先生の有意義なお話も聞きたいのです。だから楽しみなんです」  あー、ハズレ。  寧子がそんな表情を見せた。 「フウ先生は街の占い師とかスピリチュアルの人みたいにはしゃべらないの。期待しないほうがいいよ。どちらかというと寡黙だし。善い顔して、笑っていることが多いね」 「いろんな人の相談に乗ってくれるんですよね」 「大波サーフィンくらいザッバァ~ンって乗ってるわ。でもさ、乗るにはまず、困っている人の話を聞かなきゃ、相談に乗れないじゃない」 「そうですね。聞くことから始めないとですね」  寧子の機嫌を損ねないように、唯々諾々と丸め込まれておく。  離れは母屋の東隣にあった。マンションの一室を切り取ったような、小さな一戸建てだ。  キッチン、バストイレ、廊下を兼用するちょっと広めのリビングダイニング。フローリング床のキッチンとリビングダイニングに、六畳が二部屋並んでいる。  鍵付きの個室部屋だ。個室はどちらも畳。タンス代わりの作り付けの収納スペースと、布団を片付ける押し入れが各部屋ともある。  布団は干してある。洗濯済みのシーツが一番上に載せてある。三泊以上の滞在者は自分で適宜に洗う。最終日に片付けて帰る。一、二泊の者のシーツは志真が洗って片付ける。 「でさ。フウ先生は口を挟まずに黙って聞いているの。こちらが口を閉じるまでずっと」  室内の説明が終了したのだ。  相談話がまだ続いていた。再開した。 「それだと困りませんか? おしゃべりな人だと、何時間もしゃべり続けそうですよ」 「それは大丈夫かな。志真さんがカウントダウンするから。三十分経ちました。一時間経過しました。……高齢のフウ先生の健康に配慮して、二時間以上は聞かないの」 「二時間だと相談料が数万円ですか。大変ですね」  ふんふんと、頭を振る。 「マジでそう思ってんの? 千早さんが払う宿泊費、いくらだと聞いてきたのさ」 「一泊分二千円を相談料としてもらう。それだけでいいと聞きました。でも、終了時点で食費とか光熱費などの必要経費分と、宿泊特別指導料などが追加で請求されるんですよね?」  何も知らないふりをして、しらっと訊く。
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