38人が本棚に入れています
本棚に追加
行くよ。
千早の荷物を入れた個室の鍵をかける。
日にち指定の開放日や毎日曜日には、芙侑の信奉者ばかりが訪れてくるわけではない。身元の知れぬ有象無象がやってくる。鍵は必要だ。
そういうところは修行道場らしくない。一般家庭の感覚だ。若い世代でも気負うことなく、二度三度と泊まる気になれそうだ。
芙侑は事件発覚後も普段通りに、来る者拒まずで受け入れていた。古参の者たちはメディアに騒がれないように、安在家をそっと見守っていた。
その隙を狙うように、初めての相談者が来始めた。メディアが喧伝したご利益を仏像ではなく、芙侑に求めてきた。
霊能者のように芙侑を扱う者たちに辟易としながらも、芙侑は誰一人拒まずに、笑顔で相談者を迎えた。
物腰の柔らかいフウ先生に面会した者たちは、皆一様に好印象を持った。また会いたいと願った。
千早が読んだ週刊誌の切り抜きに、そんな記事があった。
これから母屋に行く。
会えばわかることは多い。
最初のコメントを投稿しよう!