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:亜衣藍:
そんな憂い顔の朱雨を囲んで、その後、インタビューや撮影を淡々と進めるのは、あまりいい気分ではなかった。
しかし、どうしてマンションで暮らしているのは内緒なんだろう?
やっぱり、美形の華道家というだけで注目される日々に鬱屈して、息抜きの為にあそこで暮らしているんだろうか?
こういった世界の事は正直ってよく分からないが、確かに、何だか格式張って息が詰まりそうだ。
「――で、この――は、どういった意趣で…………って、おい、真澄!!」
その鋭い声に、真澄はビクリとしてカメラを落としそうになった。
「は、はいっ!? 」
「お前、何をボンヤリしてんだよ! 新人だからって、オレは甘くしてやんねぇからな!」
「す、すみません…………」
伊織に怒鳴られ、真澄はシュンとしてしまった。
(そうだよな、新人で初日だからって、仕事はちゃんと集中しないと……)
そう反省していたら、なんと朱雨が『怒鳴る事はないじゃないですか』と、伊織と真澄の間に入ってきたではないか。
驚いて真澄が言葉を失っていると、朱雨は続けて強い口調で言う。
「あなたは、彼の先輩なんでしょう? なら、後輩は叱るのではなく正しくフォローして導いてやるべきだ」
だがこれに、伊織はカチンと来たらしい。
「――そういえば、お宅さんも、何やら訴訟騒ぎで最近トラブルがあったようですしね」
「……」
「お弟子さんに訴えられたんでしたっけ? 」
「実家の事は――オレには関係ないです」
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