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:yunomu:  いきつけらしい居酒屋につくと、軒先にはすでに凌輔が待っていた。 「じゃじゃーん。社長から志、いただいてまーす」  その手には封筒があって、それをヒラヒラさせながら嬉しそうだ。 「席、とっときましたんで、どーぞどーぞ」  手慣れた様子で店の奥の座敷へと案内される。  こぢんまりした、今流行りのおばんざいやさんといった感じ。  壁のいたるところに貼られたお品書きが、家庭料理っぽいものばかりで好感がもてた。  ひとり、田舎から出てくると、誰かの手料理が無性に食べたくなる日がある。  ここに揃ったみんなも、そんな感じでここに集まるのかな、なんて真澄は考えながら末席についた。  席につくとすぐに、店員さんがひとり、膝立ちで注文を取りに来てくれた。 「みなさん、とりあえずビール?」  気安い感じの口調に顔をあげると、 「あれっ、見かけない顔!」  その美人(と形容したくなるような、だけど声はしっかり男の人だからきっと男性)の店員さんが、しげしげと真澄の顔を見ながら感嘆の声をあげた。
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