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:亜衣藍:
「え、えぇ!? そんなの、き、決められないですよ! 」
大慌てて、真澄はブンブンと首を振った。
すると、昂が苦笑しながら凌輔を見遣る。
「――お前も、ちょいと飲み過ぎじゃねーの? 」
「そう言う昂さんは、全然飲んでないじゃないですか~」
「大人は、自分のペースを守るんだよ。お前も、大人のつもりなら自重しろよ」
二本目のタバコに火を点け、フゥと煙を吐きながら、昂はニヤリと笑う。
すると、凌輔は『大人』の単語に少し我に返った様子になり、ゴホンと咳払いをすると、そそくさと席へ座り直した。
「そ、そうだよな。ゴメン、ついテンション上がって――絡み酒みたいになったかな? 」
「いいえ! そんな……」
「この出版社、バイトの僕もこんな飲み会に誘ってくれるような、凄くイイ雰囲気の会社でね。真澄にも早く打ち解けてもらいたくて――」
どうやら、この凌輔という人は、どこか掴みどころのない所もあるが、根は善良な人物らしい。
自分で先程言っていた通り、視力が弱い所為か目付きはちょっと悪いが、うん、それ以外は何も問題ない。
そう真澄が思った時…………。
「凌輔はな、こう見えてタチなんだぜー」
「ちょっと! 昂さん!! あんたが一番酔ってんじゃないですか!? 」
「「!!」」
真澄以外の面子が、その単語にピッキーンと固まった。
「何ですか、タチって? 」
一人、意味の分からない真澄が、純真な眼差しを伊織へ送った。
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