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:凪瀬夜霧:
すると朱雨はそっぽを向いて「べつに」というだけ。
完全に聞いて欲しくないオーラが出ている。
セカンドハウス……というには、生活感がある。
むしろこっちがメインなんじゃないかと思う。
昨日のあの豪邸はなんだか冷たい感じがして、そこにいる朱雨も冷たい印象があった。
けれど、昨日ゴミ捨て場で会った朱雨は、あんなに冷たい感じはなかった。独特の壁はあったかもしれないけれど、親切に声をかけてくれたのだ。
そして、今も。
「すみません、立ち入った事を聞いて」
なんだかとても事情がありそうな感じがして、真澄はペコリとまた頭を下げてしまう。
家も複雑な感じがしたし、あまりプライベートな事を話し合う関係性でもないのだから。
立ち上がり、時間を見たら、まだシャワーを浴びて着替えるくらいの時間はある。
改めてもう一度「お手数かけました」とお礼を言ってペコリと頭を下げると、朱雨は可笑しそうな顔をした。
「そんなに気にする事はない。同じマンションなのは分かっていたし、まったく知らないわけじゃない。あそこで放置して、警察にご厄介というのも良心が咎めただけだ」
その柔らかな視線はとても温かみがあって、驚きと同時に魅入ってしまう。
元々の顔立ちが綺麗だから、絵になるんだろうと思う。
それに、インタビューで受けた淡々とした印象よりも今の方がずっと、優しいと思う。
こっちが本当なんじゃないかと、思えるくらいだ。
朱雨に「お邪魔しました」と告げて、真澄は自分の部屋に戻っていった。
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