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:凪瀬夜霧:
正直、一つ読むのに全力疾走でマラソンした気分だった……主に気持ちが。
「そんなんで今後どうするんだ」
そうは言われたって、なにせ未知の分野……というか、男の真澄からしたら触れるはずのない世界なんだから仕方がない。
なんだ、社会人ってこんなに試練が多いのか? ゴミ出し、満員電車、全部が試練だけれどこれが一番だ。
そんな時、目の前に湯気の上がるコーヒーのカップが差し出された。
「あの、よかったらどうぞ」
「あっ、有り難う……」
差し出してくれたのは、ちょっと犬っぽい青年だった。適度な茶髪に、大きめの目で、なんだか元気いっぱいという様子だ。
「オレ、三原祐樹っていいます。同じ部署で新入社員なので、よろしくお願いします」
「あ、ぁ。うん。佐野真澄です」
ぎこちなく自己紹介すると、三原はニコッと笑って立ち上がり、そして真澄が手にしている雑誌を出来るだけ見ないように棚に戻したのだった。
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