校長先生の花瓶

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 班長のタカヤが、聞かん気そうな顔つきを青ざめさせてつぶやいた。  それを拾ったアキトは、立ち上がりもしないまま勢いよく首を横に振る。 「お、おれじゃないよ! おれたちが来た時にはもう……!」 「え? 違うの?」 「アキトとヒロキじゃないでしょ。これは別の誰かのしわざだよ」  あたしが茶化したタイミングで、委員長のミサがうろたえた様子の二人をかばう。  言われてみたら確かに、アキトとヒロキが入った時には割れた音なんてしなかったっけ。 「ミサは黙ってろよ。それじゃ誰がやったんだよ!」 「知らないよ、確かに掃除のチャイムがなった後に、おれが一番先に来てドア開けたけど……でもおれじゃないよ! タカヤだって音、聞いてないだろ?」  声を荒げるタカヤに、自分に罪を着せられてはかなわないとアキトは血の気の引いた顔で力説する。  立ち尽くしていたヒロキも大きく頷いて見せた。 「でもこのままじゃ犯人にされちゃうわよ。あんた、いつもいたずらばっかりしてるから」  あたしは普段のこいつらの様子を良く知っている。  廊下を走った、あいさつ週間のポスターに落書きした、ぞうきんとほうきで野球をやった、なんていつものことだったし。  そんなヤンチャな奴らが「やってない」なんて、信じてもらえない確率の方が高いに決まってる。  それなら、と人差し指でメガネのブリッジをクイっとやる。  これ、なんだかかっこよくない?  しょうがないわね、この美少女探偵ハナが一肌脱いであげますか!   あたしは腕まくりをして割れた花瓶に近づいた。 ―――続く
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