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青春の1ページ
高校3年生、春。
"春は出会いの季節"などとよく表現されるが、今年の春は少し意味合いが違う。高校最後の学年、高校最後の行事……これから始まることすべてに、必ず"最後"がくっついてくる。私たちは、終わりに向かって走り出していて、同時に自分たちの将来に向かって走り出している。だから、かけがえのない今この瞬間を、1秒たりとも無駄にはできない。そんな変な使命感に駆られている。
「ごめん、待った?」
まだ少し冷たい風が、私の頬を撫でる。振り返ると、指定された時刻より5分ほど早く、和田直人が私の元へ歩み寄ってきた。
「驚いたよ。まさか君から直々にお誘いがあるなんて……一体どういう風の吹き回しだい?」
"ドクン、ドクン"
さっきから胸のあたりがうるさい。
うまくできるだろうか?
私は、自分の気持ちを悟られないように、少し首を傾げながら微笑んだ。すると、彼の表情はみるみるうちに緩んでいった。
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