#03 朝の来ない街
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#03 朝の来ない街

トントン 宿の食堂を後にしてから半時、今夜も瞑想に入るための準備をしていたところでした。 この部屋にだけ響くようにして叩かれるかすかなノックです。 トントン 長い旅の途中、名前も定かではない見知らぬ街です。 来客など心当たりがあろうはずもありません。 トントン 放っておいてもノックが止まることはなさそうです。 大切な瞑想の時間を邪魔されるのも面白くないのですが、一応返事だけはしてみました。 「誰だ?」 「この宿に入る所をお見かけました。誰にも気付かれないように、夜になるのを隠れて待っていたんです。こんな時間に申し訳ありません」 返ってきた声は私の予想を全く裏切るものでした。 その声はあまりにも幼かったのです。 「旅の導師さまにどうしてもご相談したいことがあって参りました。この街の人ではないからこそしたいご相談があるのです。どうか中に入れて話を聞いては頂けないでしょうか?」 私はこの声の主にとても興味を抱きました。 言葉の中の『この街の人ではないからこそ』という部分が私の心を掻き立てたのです。     
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