一人対二十九人

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* * * * * * ありがとうね、──お父さん。 その場で私は目を瞑り、父のためにだけ黙祷を捧げた。 しばらくの時間そうしたあと、最後の菊の花を自分の席に供え、風で揺れるカーテンを勢いよくあけた。 開かれた窓から空を見上げる。久しぶりに見る広い空に、──私は何も感じることはなかった。 やっぱり私は下を向く。四階したのコンクリートを見つめ、空っぽになった私は、──窓枠を飛び越えた。 (了)
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