一人対二十九人

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閉められたカーテンが外から吹く風でゆらゆらと揺れている。照明もつけず教室に独り佇み、目の前にある机を、私は冷めた気持ちで見下ろしていた。机上には陶器で出来た薄紫色のチープな一輪挿しが置かれており、そこに挿された一本の白い輪菊が、私を憐れむように見上げている。 菊の花に目を落としながら思う──。 イジメが始まった理由って何だったっけ? 幼い頃、早くに母親を亡くし、たった一人の肉親だと父は私を甘やかし、私の為なら何でもしてくれた。そんな育てられ方をしたせいか、多少わがままなところはあると自分でも自覚はしているが、それがイジメにつながるほどのこととは思えない。カラオケの誘いを断ったこと? 友人の欲しがっていたバッグを先に手に入れてしまったこと? 考えても分からないけど、人が人をイジメるきっかけなんてどうせ些細な事なのだろう。
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