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飲み会の帰り、駅に向かう組で蜂谷くんと一緒だった。
私はすかさず駆け寄って声をかける。
「あの…ちょっといい?」
「うん。何?」
「さっきはありがとう…」
「あーいいって。あいつらが悪い」
隣で歩きながら、蜂谷くんを見上げる。
それ以上何も聞いてこない彼に、私は意を決して口を開いた。
…他の人はどうでもいいけど…蜂谷くんにはちゃんと話したい。
「……あのね、私入社してすぐに庄司さんに誘われたの。私は付き合うつもりだったんだけど……向こうはそうじゃなかったみたいで。……バカだよね、私」
「……そうなんだ」
あれは入社間もなくて何も分からなくて、不安もいっぱいの時期だった。
社内でもよく話しかけてくれたり、仕事の後に飲みに連れて行ってくれたりして嬉しかった。
ある時給湯室で二人きりになった時に……突然キスされた。
すっごくドキドキして嬉しくて、仕事の後に誘われてほいほい着いて行って……
……男の人って、一回自分のモノにしたらどうでもよくなったりするんだって思った。
女の子は……一回したらもっともっと好きになるのに……。
「多分…山崎くんは庄司さんに聞いたんだと思うの。どんな言い方したのか分からないけど…」
「あいつらにも、噂はでまかせだって言っとくよ」
「……ありがとう」
……本当は、蜂谷くんに分かってもらえたらそれでいいんだけど。
「しっかし庄司先輩ってそういう人だったんだな。鈴木、気を付けろよ?もし何か言ってきたらすぐ言って」
……きゅーん……
嘘。嬉しすぎる。
そんな……私を守ってくれる、みたいな言い方……。
やっぱり……好き。
私頑張ってもいいのかな……。
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