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「で、どんな悩み?」
先輩が前を向いて運転したままで言った言葉に、ついきょとんとしてしまう。
「…言うワケないじゃないですか」
「言わねーのかよ!」
…ということで、真っ直ぐ家まで送ってもらった。
そしてそれから数日後……。
「先輩!!どうしたらいいと思いますか!?」
「……相談しないんじゃなかったのかよ」
だって……モテモテの先輩ならどうしたらいいか分かるかなと思って……。
私があの女の人を見た次の日から……蜂谷くんは見るからに浮かれていた。
たまにぽーっと空中を眺めながらニヤニヤしたり、悶絶したりしてることもあって…………
これってやっぱり……失恋決定的……?
「気になるなら聞いてみろよ。何も告白する訳じゃないんだから、それぐらい簡単だろ」
「……やっぱりそういうとこ……先輩は自分がイケメンで自信があるから、そういう風に簡単に言えるんですよ」
ちょっと拗ねて言ってみたら、突然首に腕を回された。
「お前、相談しといてその言い草は何だよ!」
しかも空いた方の手で髪の毛ぐしゃぐしゃって……
「きゃー!最悪……ボサボサになったじゃないですかー!!」
毎朝綺麗にセットしてるのに!…って必死に髪を直していたら…
先輩は急に声のトーンを落として、
「……俺だって後悔してるよ。あの時、何が何でも捕まえてちゃんと気持ちを聞けばよかったって。聞かないで後悔するより、聞いて後悔する方がまだ生産的だろ?」
「……先輩……」
先輩の表情は見た事のない切ない顔。
こんな自信ない顔もするんだ……。
「…自分から相談しといて、すみませんでした。もうちょっと、頑張ってみます」
「おう、頑張れよ」
そう言って微笑んだ先輩は、いつもの自信満々の表情だった。
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