温泉旅行 後編

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〜回想〜 「おーい、亜蓮!どこにいるんだーい?」 ヒック、ヒックと幼い子供の泣き声が木の影から聞こえる。 「おい!亜蓮どうした?!何かあったのか!」 「うぅ、お兄さまぁ、うわーん!」 亜蓮は、とても今の彼とは想像が付かないほど可愛らしい容姿だった。 その為か、 「姉さまが、また、僕の事女の子みたいって、僕なんか、期待されてないって。」 こんな事を言われるのは日常茶飯事で亜蓮も幼いながらにそれを無視していた。 「それで、ヒック」 と言って、木の上を指差した。 その小さな指の先には、小さなぬいぐるみが木の枝に引っかかっていた。 あれは! 「お母様から、ヒック!貰った、ぬいぐるみが、ふぇ、えーん!」 子供の僕らでは届かない高さのところにそのぬいぐるみは引っかかっていた。 僕はグッと爪が手のひらに食い込むほど握りしめた。 僕はお兄ちゃんなのに何もできないなんてと自分の無力さに嫌気を覚えた。 だけど、それ以前に弟の事をこのように虐める従姉妹の姉さまが憎たらしく思った。 そんな時、 「何を泣いているの?」 と優しい少年の声が聞こえました。 「ふぇ?」 と弟はピタと泣き止み、見上げた。 僕も弟のその行動にならって木の上を見上た。 そこには、僕と同じくらいの少年が木の上でぬいぐるみをプラプラとこちらに見せながら、ニコリと微笑んでいた。 「き、君は?」 と僕はその子に話しかけた。 「僕はー」 と言いかけたところで、 「おーい!坊っちゃん! もう帰りますよー!」 と厳つい男がこちらに向かって手を降っている。 「チッ。なーんだ、もう終わりなのか。まだ、この可愛い子達に挨拶出来てないっていうのに。」 とぶつぶつ独り言を喋りはじめた。 しかし、すぐにその少年は木の上から飛び降り、亜蓮にぬいぐるみを優しく返してあげていた。 「っ!あ、ありがとう!!」 と亜蓮は尊敬の眼差しをその子にあてていた。 「いえいえ、また何処かで会えると良いですね」 と僕らに向かって王子様みたいに挨拶をしてあの厳つい男の方へ向かった。
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