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なっ、なんだと。この4年間王子の座にいたこの俺が、編入してきた1年に称号を奪われただと!?誰だそいつは。
荻原 亜蓮?
あれ、この名前確か。
入学式に新入生挨拶してた男か。
好みの甘い顔だったけど、図体がでかくてすぐ興味無くした奴だ。
完全に油断してた。
下の方に何か書かれてるな。
『元生徒会会長 黒宮 李人 は風紀委員長に任命する。 理事長♡』
あ、さすがにいまの俺にその♡はうざいです理事長。
てか待てよ、まじか。
風紀委員長って理事長の任命の他、人気も関わるよな。
ということは、まだ人気は落ちて無いって訳か。男の子達のお誘いは減るかもしれんが、少し救われたな。
しかし、俺が風紀委員長か。前風紀委員長は少し堅苦しいところがあったから生徒会よりよっぽど大変なのだろうと認識していた。まさか、自分がその役職につくとは。手を抜く気はないが、割と不安だ。
それよりも、風紀委員長でも生徒会長と会う機会はもちろんある。あの男とは絶対会いたくない。入学式で見たあの男は何故か、俺がその場を離れるまで涼し気な顔をしながら熱が籠もった瞳で執拗に視線を向けてきた。
どんな奴か知らんができれば関わりたくない。それに、新聞部のあの書き方だと、俺が元王子だと馬鹿にされる可能性もある。これから顔を合わせる事が億劫でしかない。
周りから黄色い悲鳴が聞こえた。
ある男子生徒は、
「朝からお二人に会えるなんて…」
と言い残してその場で倒れた。
他の生徒たちも、次々に集まってくる。
「イケメン!」
「目の保養!!」
「抱いてぇ〜」
次々と声を荒げては周りの仲間たちと泣きながら拝むものや、手を握り合って幸せそうな顔をこちらに向ける人もいた。
最後は野太い声が聞こえたので俺はパスしたい。出来れば可愛く鳴いてくれる子がいいな。
そんなことを考えていると、背後に気配を感じた。仮にも元王子の俺に近づこうとするのはよほどの知り合いじゃなければされない。
まぁ、その他別目的のお話はいろいろあるけど。
「おはようございます。黒宮さん」
程よい高さのゆったりとした声で丁寧に挨拶をしてきた男を振り返って確認すると俺はニ度自分の運の悪さを呪った。
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