温泉旅行 後編

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温泉旅行 後編

ビー…、ビー… 遊くん来たのかな? 「はーい!」 「ごめん、起こしたね」 遊くんは申し訳無さそうに部屋に入ってきた。 「ううん。なんか、休もうとしても休めなくてね。だから、大丈、夫、だよ…」 あぁ、心臓がズキズキする。 「…。なんか、あったのか?」 遊くんは優しく、心配してくれる。 「ん、いや。ただ、ちょっとね。 それより、旅行どう??皆楽しめてる?」 と返事を濁し、会話を違う方に持ってこうとしたが、 「あのさ、李人君。亜蓮が何か君に、」 とはっきり言われてしまった。 「…。んー?特になんにもないよー」 ヘラヘラといつもの俺を取り戻す様に、心に蓋を掛ける。 「…そっか。」 と俯いて黙ってしまった。 んー、遊くんには申し訳ないけどあまり言いたくないからなぁ。 遊くんにまで引かれたら、俺、完全に普通の関係に戻れなくなるよな。 「そうだ! 遊くんお茶とお菓子食べないか?」 「!」 お菓子!?と遊くんは今にも飛びつきそうな勢いで立ち上がる。 「ふふ、お菓子、好きなのか?」 その様子が可愛くてつい笑ってしまった。 コクっと遊くんは小さく頷く。 「お菓子とお茶準備するから、李人君は寝てて。」 「ありがとう。お茶は棚の上に置いてあって、お菓子は、冷蔵庫の中に入ってるから好きなの取っていいよ」 遊くんは冷蔵庫の中に気に入ったお菓子があったらしく急いで中身を器に移していた。 「はい、お茶はこっちに置いとくね」 と俺の布団の横にお茶とお菓子のトレイを持って来てくれた。 「うん、ありがとうね」 はぁ、本当に可愛いなぁ。優しいし、気はきくし、俺が本当に好きになるはずだったのは遊くんの筈なのになんでアイツの事を好きになってしまったんだろう。 はぁ、とため息をつくと、お菓子を食べていた遊くんはお茶で喉を潤してから喋りはじめた。 「僕と亜蓮の昔話してもいい?」 ん?と思ったが凄い気になったので、聞かしてくれと言った。
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