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カタ
引き戸を閉め、靴を脱いで部屋の中に入る。
入口から右に入ると部屋につながっており畳のいい香りが部屋いっぱいに広がっている。
部屋にかいって正面に床から天井までの窓ガラスがあり、そこから見える景色はこの旅館に代々雇われている庭師の方が庭の手入れをしているらしく、四季を感じれるその庭はどこの角度から見ても素晴らしいモノだといわれている。
窓のそばにより、俺は
「おぉ、流石だな」
そこから見える景色に感嘆を漏らした。
「えぇ、そうですね。」
背後から荻原が答えた。
そう背後からだ。
後ろを振り向くとそこには視界いっぱいに広がる荻原の胸板があった。
「お、おい。近くないか?」
というと、
「え?そうですか?」
と返され、少し窓側に寄るように荻原から離れる。
いや、離れようとしたときにはもうがっちりと腰を荻原の腕によって固定されていた。
「なぁ、なんで俺に抱き着いている。」
と言いながら、その腕の中から抜け出そうと自分の精一杯の力を振り絞って離れようとしたが俺の力じゃ荻原には勝てず、より一層強く抱きしめられた。
おいおい、何なんだよ。と密着した荻原の服からこいつの香水の香りなのかわからないがとてもいい香りがして、顔を埋めて腕を荻原の背中に回しそうになった。
そうしたら、いきなり身体を引きはがされ驚いた。
「す、すいません。あ、おれ荷物の整理しますね。」
と言いながら、俺から距離を取り自分の荷物の方へ向かった。
俺は、自分が荻原相手に抱き返しそうになったことを思い出し顔が真っ赤になった。
いやいや、何を意識しているんだ自分は。
そう自分を落ち着かせ、先ほどの態度の荻原お焦った顔を思い出した。
すいませんか、か。
といいながら離れられて少しさみしい気持ちになった。
だから、違う違う!相手は俺の称号を奪った男だぞ!
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