桜の頃 僕たちは

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「あ、ネコ」 しおりさんが古いアパートのベランダに立ちシーツをたなびかせながら、つぶやいた。 しおりさんの細いうなじがほんのり桜色で僕のびねつは止まらない。 しおりさんは3年前に僕の家の真向かいのアパートの305号室に越してきた。 しおりさんの目は。 少し青い。でも本当に青いわけではないのだろう。僕が勝手にしおりさんに対して抱いているイメージなのだろう。 しおりさんは長い坂の道の上にある精神病院で事務職員として働いている。 「けいくん。ネコだよ」 ベランダからしおりさんが腰まで届く長い髪を風に揺らしてしたを指さした。 「ネコ?ノラネコですか」 僕がテレビから視線を反らしてしおりさんをみるとしおりさんは、 「あのね。あのネコ、あたしなの」 とささやいてわらった。
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