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魔は全身の毛を逆立てる猫のように、全身の皮を波立たせる。
黒い皮膚は不安定にゲル状化と固体化を繰り返しその表面を百足やゴキブリといった害虫の形をした何かが蠢き、見るにおぞましい。
魔は悦びを挙げるように長い首を仰け反らせた。
刹那、大きく円を描き前に振り出される魔物の頭、首がギリギリと音をたてる。
前に投げ出されるとそこから鞭のような舌が女に目掛けて射出された。
どす黒い汁を撒き散らし、不規則に躍り狂うように、弾丸のように迫る。
いち速く反応したのは男だった。
反転し、横凪ぎのように瞬時に抜刀。
女も男を追うように後ろ跳びで反転、振り向き様に男の背中を一眼レフで捕らえシャッターを切った……。
狙われているのは女……しかし、その目に恐怖は微塵もない。
月光の光を取り入れた彼女のガラス玉のような大きな目は、奥底で乱反射を繰り返し、強い光を帯びていた。
それは、戦う女の目。
その目でカメラ越しに男を見詰めシャッターを切った。
刹那、消える男の姿……。
いや、消えたのではない、速すぎて目で捕らえきれなくなっていた。
男の白髪が月夜で銀色の螺旋を描いているのが証拠だ。
瞬時に魔の舌が切れる、男の剣技の残身が残像として残る、なびく白銀の髪とは逆に力強く伸びた白銀の刀身、袈裟斬りの一撃。
残像が出ると同時にまた切れる、横一線、 唐竹、切り上げ……銀色の輝きが増すように幾つも重なる。
魔の舌は一定の所で止められるように細切れにされていく。
男にとっては幾つもの動作だが魔にとっては一瞬、幾度も切られたところで舌わを丸めてようやく怯んだ。
二人はまた魔物に背を向け走り出した。
二人の行く先にはただっ広い公園だった。
そこは国がこの特殊部隊の為に設立した魔を誘い込むための公園だった。
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