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彼は目尻がやや垂れていますが、眉が力強く、吊り上がっていて、気難しい人のように見えます。若冠26歳にして老け込んでいるのですが、生来、目鼻立ちは良いので、女史受けは良いようです。軍服を着ているので、昔より厳しさは増していました。
ですが、芯のところは存外温厚であります。正月にはわざわざ私の実家に酒を持って挨拶に来て飲み明かしたものです。
「久しぶりに見たけんど、すっかり方言も抜けて……。今は将校さまですかいな」
「そういうお前も、ちっこいのは変わっとらんな」
まあ、そうして軽く挨拶をした訳ですが、頭の真ん中には、やはり被験体の事が幅をきかせていましたので、私は本題に話を変えました。
「山梨のイザナミはダメだったんですか?」
「ああ。神経の接続が上手くいっとったんだが、頚椎のとこが短絡してな、焼き切れた」
「やはり山隈(やまくま)式の蘇生法だと難があるわけですね」
「所詮は屍だ。いくら保存状態が良うても、劣化するのは止められんさ」
「山隈教授が仰っていました。電気系統の蘇生法では被験体への負荷が大きい。劣化は促進され、案の定数ヵ月ですぐに瓦解した」
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