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蘭はマントの裾を左右に引いて身体の前で縛った。
「絶対に……連れて帰る。ひとりでは逝かせない!」
意識を失くしている上に、ひと回りほども違う要の身体はずしりと重い。しかも痛めつけられた蘭の身体は、力を入れるだけで悲鳴を上げていた。
「くっ……この程度!」
しかし、そんな事では諦めきれない。
要を失いたくないと思う自分が、確かに存在するのだ。
情け容赦なく身体を割り裂き、激しく抱く要を怖いと思う反面、要の全てを知り、その温もりに触れたいと思っている。
散々に身体を弄び、痛みと服従を強いた男だというのに、このまま放っておけない。
低いその声で「蘭」と名前を呼んで抱きしめて欲しい……
なぜそう思うのか。
胸を刺す、もやもやとした気持ち。
その理由を知りたい。
いや……知らなければならない。
たとえ、知ることで自分が自分でなくなったとしても。
蘭は震える足を踏ん張ると、港へ向かって足を踏み出した。
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