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#13 烙印の意味
蘭の細い身体が震えていた。
要の苦しそうな息づかいが、耳にまとわりつき離れない。
ふと視線を上げる。そこにはベッドに横たわる要の姿があった。静かに寝息を立てる彼は、斬られた時と比べると、ずいぶんと穏やかだ。
それでも、記憶に焼きついた意識を失くした時の要の姿が、蘭をひどく不安にさせた。
「要……」
そっと要の手を包み込んでみる。蘭の手が震えていた。
要の冷たい指先に恐怖を感じながらも、握った手の甲に額をつける。要がそこに居るという事を、自分の中に刻むようにして心を落ち着かせようとした。
要に聞きたいことはたくさんある。
どうして俺を抱いたのか。
どうして俺を助けに来てくれたのか。
どうして俺の不快を取ることを、あれほどまでに優先しようとしてくれるのか。
どうして要を思うと、こんなに俺の胸は締め付けられるのか……
「要、早く目を覚ましてくれ。じゃないと俺は……」
じゃないと、どうなるというのだろう。
わからない事ばかりで混乱している。考えても考えてもまとまらない。
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