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こんな混乱時だというのに、無駄に目立つ自分の容姿が時に恨めしくなる。
蘭の茶色い髪は長めのショートカットで、伸ばしたサイドだけが白い。これは染めたわけではなく生まれつきだ。やや丸みを帯びた輪郭に蒼く澄んだ瞳、そして小ぶりな唇は、ほんのりと赤く染まっている。
そして船での生活が長いのに、シミひとつ無い白い肌。しなやかな筋肉はついているのに華奢な身体。
ひとつ間違えれば『女』と思われる見た目だ。その外見は時として武器にも弱点にもなる。
だが、蘭は決してその容姿を気に入っているわけではない。むしろ、無駄に視線を惹く容姿を忌々しげに思っていた。
「目立つ」というのはわかりやすさだけではない。男ばかりのこの世界では、余計な好意まで持たれてしまうことも少なくなかった。蘭自身は、そうしたものを惹きつける武器として利用したことなど一度もないが。
副船長としての地位を得たのも、巧妙な戦略や冷静な判断力。そして何よりも船員たちの強い信頼を勝ち取った証なのだ。
それは戦闘においても群を抜いており、皆は全幅の信頼を蘭においていた。
持てる力のすべてを、蘭はこの船と仲間を守るためだけに注いできた。
そしてこれからもそうしていくつもりだった。
なのに……。こんなことになるなんて。
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