#4 男娼の烙印

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#4 男娼の烙印

 コンコン…………  覚醒には程遠い、意識の奥深くで、何かを叩く音がする。  その音は誰かを呼んでいるように聞こえた。 ――なんだろう?   音に反応し、蘭は身体がもぞりと動く。  コンコンコン………… 「ん……っ」  再び聞こえた音は、今度こそはっきりと蘭の耳に届いた。  誰かが部屋の扉を叩いている。蘭は重い瞼を持ち上げた。  朝から、副船長の部屋の扉を叩くとは、よほどの事があったのか?  蘭はそう思いながら、顔を軽く上げた。なぜだか腰のあたりがひどく重い。  温かいものが、自分の腰を抱えていた。枕もいつものより肌触りが気持ちいいし、何より身体が包まれているようで、とても心地良い。  それは人肌のぬくもりに近い気がした。  そこまで考えて、蘭は大きく瞳を開く。焦点の合わない目に飛び込んできたものは、昨夜自分を苛んだ男の、印象的な赤い髪。 「ひっ!」  微かな悲鳴をあげて身体を引いたのは、心に刻まれた昨夜のショックのせいだ。  とにかくこの男から少しでも離れなくては。何せこの男は、男の身体で欲情する危険人物だ。蘭はあわてて飛び起きた。 「ぐっ! あっ、あぁっ!」     
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