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戸惑い、活、勝つと叫んでみても、自分の心の中に、虚栄心なり、栄達心なりが芽生えることはなかった。その大きなまん丸のお月様を見るたんびにこう思う。
「破壊してぇ」
そう、たったそれだけである。破壊し、蹂躙して、木っ端微塵にしてやりたい、星の藻屑にしいろいろな太陽に食われえてしまえ、お前は単なる隕石にしかなりえない、そうさ、お前は単なる隕石さ。
「破壊してぇな、ああ、ナイトフォースよ、大月よ、破壊し恋をしている。こんな俺を見るなりあざ笑え、ふんとあざ笑え」
一歩一歩踏みしめる。いまだ、誰も越えたことのない、いや、越えたことのある山を越えようとしている。黄金色に輝く樹木から、樹液のにおいがしたたり、緑の草からは当たり前のように草のにおいがして、キリギリスが飛び交い、たまに、大きな全長五十メートルはある、蛇が、こちらを睨み、お辞儀するくらいである。やぁやぁ、こんにちは。
といいながら、腰から大きな剣を引き抜くなり、叫んだ。
「てめぇも壊して、壊して、壊して、壊してえええええ」
だが蛇はお辞儀して立ち去った。この自然この遥かな山におきこの野生人は自然からも人間からも人目おかれている。
一人ぼっち、永延の一人、妻もいる、もう四十になる、子供もいる、二人いる。男と女だ、なぜ息子と娘といわないのか、にくいからさ、壊したくてたまらないからさ。
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