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彼女と同じ、二十と八つしか年を重ねていなくて、人生の半分も生きていない。生きる知識も充分にない。 「……わがままを、言ってもいいかな」 「うん? なしたの? 私ができることならいいよ。ふふっ」 「…………君にしか、できないんだ」 いたずらに微笑む彼女の手をとった。 ……りりりりり。りりりり。コオロギが鳴いている。 「ずっと、君とこうして過ごしていたい」 少し乾燥気味の指と、僕の指を絡める。 力を入れると多分折れる彼女の手。できる限り大切に、優しく握った。 「君と、この街に形を残したい」 今まで一緒に過ごしてきて、僕の気に食わない所なんか腐るほどあっただろう。彼女が彼女の友人と電話してる時に、多分僕のことだろう愚痴を言っている風に話が聞こえたこともあった。……そう言えば、その後に僕に抱き付いてきたのはなんだったんだろう。 「僕はきっと、君の理想にはまだ近付けてない。苦労ばかりかけてきただろうし、僕の知らない嫌なことも君は、胸の内に溜めていると思う。」 「……急に、どうしたの?なんだかまるで…………」 そう呟いたきり、彼女は顔を赤らめ、大きな瞳を揺るがせて押し黙ってしまった。 「……うん。そう。残念ながら、想像通りだ」     
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