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この世に生まれ、物心がついた時には、ピンクや黄色の、フリルのついた可愛らしい洋服を着せられ、母に手を引かれて歩いていた。
異国の着物、よく分からない素材で出来た白過ぎる壁。外に出ると、野山は無く、窮屈そうに箱のような家屋が並んでいる。
あまりに異質な世界に、沙羅ははじめ、混乱し恐怖した。
徐々に理解させられる、自分が死んだ過去。
そして、どういう理由かは分からないが、今謎の世界で生きている自分。
はじめは仕方なく、そして徐々に純粋に、彼女はその一つ一つに興味を持ち始めた。
悲しく締め付けられるように苦しい過去の記憶は消えない。
しかし、もともと、朗らかで、好奇心旺盛な彼女は、この新しい世界を好きになれそうだと思った。
覚悟を決めよう。
というか、決めるしかない。
私はここで、生きていくんだ。
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