成長

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成長

直はうんざりしていた。 中学に入学して3ヶ月経った。5クラスあるこの学校で、直は1年2組、沙羅は1年5組。 「残念、一緒じゃなかったわね。」と千尋は言った。 何が残念だ、と直は思う。 クラスが離れただけでも良かった。 沙羅の「付きまとい」は中学に入ってマシにはなったものの、相変わらず続いていた。 「直」 帰りの会が終わった時間を見計らい、教室の前のドアに沙羅が現れる。ヒュー、と2組の男子がからかう声をあげた。 直はそちらを睨み付ける。沙羅の方は見ずに、鞄を持って後ろのドアから出た。 「あいつら出来てるって」男子たちが直のいなくなった教室で笑いながら話しているのが聞こえる。中学生男子にどう思われてもいいが、気分のいいものでは無い。小走りで後ろからついてくる沙羅の姿を見て、直は、勘弁してくれ、と思った。 付きまとう、とあの時沙羅に言われて、直は問題無いと思った。自分はもう、過去の事を沙羅と和解するつもりは無い。無視し続けていれば、愛想を尽かして止めるだろう、と。 残念ながら沙羅は直が予想していた以上に執念深かった。それは、決して憎しみだけではなく、この世界唯一の仲間を逃さない、という気持ちから来るものだったのだが、直は沙羅の気持ちが分からなかった。 なんで、憎い相手に付きまとえるんだろう。
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