同じ月を見ていた

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 十六歳だった。  初恋だった。  はじめて人を好いた。    先にも後にも、心から好いた人は彼だけだった。  彼の幸せを願った。  彼も、わたしも幸せだった。  選んだ道に間違いはなかった。  あの日、打ち明けなくて正解だった。 『月が綺麗だそ』  そう言った彼に気の利いた返事ができなかった。  でも、  同じ月を見ていた。  わたし達は、同じ月を見ていたのだ――――。
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