2人が本棚に入れています
本棚に追加
「せんせえ、行くよお」
それっと、バーナードが投げたボールは、すぐ地面にぶつかって、2、3度跳ねてから、亮輔の元に転がって来た。
「上手く投げらんないなあ」
バーナードは不満そうな表情を見せた。せんせえみたいに上手じゃないや、と。それを聞いて、思わず亮輔は笑う。
「僕だって、全然上手じゃないぞ?友達からは、鈍臭いなんて言われてさ」
そうそう、このボールを貰った奴からさあ……。そう言って亮輔は、拾い上げたボールを見つめた。
「せんせえ!」
バーナードの叫びに、はっと顔を上げた。
「早く投げてよう」
亮輔は苦笑いした。こんな話、子供にするもんじゃないよな。ごめんごめん、とボールを投げ返す。ところが手元が狂ったのか、ボールはバーナードの頭のはるか上を飛んでいった。
「あっ……」
だがこの小さな叫びは、ボールの行方を嘆くものではなかった。ボールを追った目線の先に映った、ボールのはるか上を飛ぶ戦闘機を見つけた絶望を嘆くものであった。
最初のコメントを投稿しよう!