赤い流れ星

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 病院内は泣き声と叫びが入り混じり、気が狂ってしまいそうだった。それでも僅かな気力を保って、サラは子供達を集めて言う。 「皆!これから安全な所に避難するわ!だから落ち着いて……まだ兵隊は来ないから!」  それでも子供達は、聞く耳を持とうとしない。サラは、焦って逃げなくてはいけない理由を安易に喋ってしまった事を激しく後悔した。  その時、頼れるあの声が、サラの耳に届いた。泣きそうになっていたその顔を上げて叫ぶ。 「先生っ!」  亮輔が慌てて駆け込んでくる。周りの子供達の何人かは、やっと現れた亮輔に抱きついた。 「全員揃ったか!?早く移動しよう!もうそこまで来てる!」  サラの返事も待たず動き出す亮輔に、彼女は戸惑ってしまった。 「ま、待ってください!」 「何だ!?」  次の瞬間、サラの口から、亮輔の想像を絶する恐ろしい言葉が放たれた。あまりの衝撃に、亮輔はその言葉を理解出来なかった。脳内でそれをゆっくり咀嚼した時、彼の背筋はみるみる凍っていくのだった。
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