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森の傍でバーナードは、燃え上がる景色をただ呆然と眺めていた。遠くで兵隊達が戦っている。さっき倒れた兵隊さんは起き上がらないけど……死んでない、よね?最早彼に、嘔吐する気力も涙を流して叫ぶ気力も無かった。
すると、突然後ろからがっと身体を掴まれた。その瞬間我に返って、バーナードは泣き叫んだ。
「バーナードっ!」
しかし自分の名を呼んだのは、聞きたかったあの声……振り返ると、今度は違う涙が溢れ出して来た。
「せんせえっ!!」
思いっ切り亮輔に抱きつき、号泣するバーナード。亮輔も安堵のあまり涙が零れそうだった。けれど、この子の前で涙は見せられない。
「一体何やってたんだ。危ないっていうのに……」
早く戻るぞと、亮輔は小さな手を引いた。しかし次の瞬間、いきなりバーナードの背中に回る。バーナードは驚く暇もなく、いつの間にか亮輔に抱かれ、地面に押し倒されていた。
「……せんせ?」
亮輔は、ゆっくりしゃがんで、とぼけた様に笑った。
「ごめんごめん、焦って足が縺れた」
その後、亮輔はバーナードの背中を押して言った。この先ずっと真っ直ぐ行けば、サラが待っている。僕は後から行くから、振り返らずに走れ、と。
バーナードは戸惑いながらも、うん、と答えるしかなかった。そして、亮輔の指差す方へ走り出した。
亮輔は何も背負っていない背中を見つめ続けた。その姿が視界から消えた時、亮輔はふらふらと立ち上がって、自分の横に広がる暗い森の中へ入っていった。
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