赤い流れ星

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 父に憧れ医者を志したのは、小学校に入学する前からだった。医者になるなら勉強しかないと、いつのまにか本ばかり読む癖がついた。その事もあって、何だか近寄りがたい雰囲気がついてしまい、友達もなかなか出来なかったのだ。今、その頃の自分が啓を見たら、きっと驚くだろう。 「頑張れよ!俺、応援してるからな」 「おいおい、啓もだろ」  啓はボールを持って立ち上がった。ボールは啓の手の上で跳ねている。 「……俺も頑張んなきゃな。お前が頑張ってんの見ると、すげーやる気出るわ」 「うん。一緒に頑張ろうな」  亮輔は空を見上げた。雲一つ無い青空に、小さく、飛行機が飛んでいた。  思わず亮輔が、飛行機、と呟くと、啓は、違うだろ、と言う。 「流れ星。赤い流れ星が流れてるぜ」  どこまでもどこまでも、ゆっくり流れる“流れ星”に、亮輔は希望を願った。それはきっと、啓も――。
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