赤い流れ星

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 飛行機が飛び立って行く。啓はそれを、ただじっと見つめていた。  あの時追い掛けた赤い流れ星、リョウ、お前はそれに乗っかって行くんだな。はは、何だ、縁起良いなあ。叶えた夢のその先、俺に話してくれる時を待ってるからな。  赤い点は、雲の向こうに消えていった。啓はそれでも、まだ見つめている。  嬉しいよ、お前の夢をずっと応援出来るんだ。俺は幸せ者だよ。嬉しいさ、悲しいもんか。どんなに遠くたって、俺達は同じ空の下にいる。いつだって心は一つだ。そうだろ?  さっきから頬を流れているのは、雨に決まってらあ。視界が潤むのは、上を向いてるから目に雨が入って来る所為で、鼻をすすっているのは、顔に当たる雨がくすぐってえからだ……。  追い掛ける物を失って、啓は下を向いた。彼の目に溜まっていた“雨”が一斉に足元に零れ落ちたが、濡れた地面にそれらの跡は一つも残らなかった。
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