001 カメラ

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「君は僕を迎えに来たのかい?」  相変わらずな口調だ。せっかく外見も“女子”らしくなってきたのに。 「何が“君は僕を迎えに来たのかい?”だ。お前の母さんに探してきてくれと頼まれたんだよ。」  おせっかいな母さんだ。小冬は小さな声でそうつぶやいた。  しんしんと雪が降り積もっていく道に4つずつ穴を作りながら歩いて行く。  「今日の晩御飯は何なのだ?」 「知るわけねーだろ。僕を何だと思っているんだ。」 「....ストーカー?」  「このまま置いて帰っていいか?」   やれやれ、と小雪は手に持っていたカメラをしまい、ウサギのポーチの中に入れた。  「....まだ使ってるんだな、そのポーチ。」 「当たり前であろう。君が初めて僕にくれたものじゃないか。」  「それはお前が自殺しようとしたからだ。」  「確かにそんなこともあったものだな。かかっ。」  「“かかっ”じゃねーよ。そして早くその口調を改めろと前からずっと言っているような気がするのだが。」  小冬の将来を心配して言う僕の声も無視し、小冬はまたカメラを取り出す。  さらっと髪が風に吹かれる。  小冬はすごく冬が似合っている。まあ勿論名前が“小冬”だからということもあるだろうが。 そこまで長くもない髪、白いマフラー、丸い眼鏡。思わずカメラを向けようとしてしまう自分が気に食わない。  カシャカシャっとシャッター音がした。 上手く撮れたようだ。  子供のようにパッと顔を輝かせて僕のところまで走ってくる。  「海斗、見てくれ、ツルだぞ。珍しいものが撮れた。」  どれどれと上から目線で言ってから写真をのぞいてみる。  周りには幻想的な風景を味わせるように白くなった木々があり、中央にはツルが堂々と立っている。   「上手くなったな、撮るの。」  「へっへー、せやろ。」  「今度は関西弁!?何人!?」  早く帰りたいんだけどな、ぼそっと呟いた僕の声はどうやら届かなかったらしい。                       
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