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第1章:魔術師のはじまり
「はぁはぁ……」
どれほど走ったのだろう?
どれほど彷徨っただろうか?
忍は荒く肩で呼吸をしながら金網のフェンスにしがみつくように崩れ、コンクリートの地面に膝をついた。
自分がいったい何をしたというのか?
襲われる理由も追われる理由もわからない。
わかっていることは、逃げなければ殺されるということ。
ただ、それだけだ。
「僕がいったいなにをしたっていうんだ!?」
忍は路地の暗がりに向かって叫んだ。
返事を期待していたわけじゃない。
ただ、叫ばずにはいられなかった。
だが、声が返ってきた。
「我と目が合った。ただ、それだけですよ」
「ただ……それだけ?」
忍は呆然とした面持ちで聞き返していた。
「そう。実に……運がなかった。くっくっくっく……」
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