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どんな武器もまともに扱えるはずもない。それなら、もう拳銃でも選ぼうかと考えた忍が別の列に向かいかけた時、なにかが彼を引き留めた。
振り向くと、そこには簡素な白鞘に入った一本の短刀が掛けられていた。鞘には――なにかの植物だろうか? 二本の茎のようなものが交差した紋章が刻まれていた。それは日本の家紋ではなく、西洋の家紋のように、カイトシールドの形をした紋章だった。
日本の短刀に西洋の家紋という違和感を感じたものの、忍は引き寄せられるようにその短刀の前に立ち、そのまま手を伸してそれを取り、鞘から短刀を引き抜いた。
刀身は二五センチほど。肉厚な平造りで、その身には北斗七 星が彫り込まれていた。
柄も白木の無垢のままだが、妙に掌にしっくりときた。あつらえた物のように忍の掌に収まっていた。
だが、短刀を扱えるのか? また、その疑念が忍の頭をよぎった。
――扱えるとかはいいか……。護身刀とかってあるし、要は自分に合えばいいんだろ。
もう、ヤケになっていたかもしれない。
忍は短刀を鞘に収め、それを持ってアンダーテイカーが待つカウンターに向かった。
申し合わせたかのように、全員がそれぞれの武器を選んで集まってきた。
日本刀を選んだのは、オタクっぽい二〇代後半くらいの男性。
ドレッドヘアの二〇代半ばくらいの男性は、鎖鎌を選んでいた。鎖分銅が気に入ったのか、チャラチャラと分銅部分を指先でいじっていた。
拳銃を選んだのは、スーツ姿の二〇代半ばくらいの女性。彼女は悩んだ末に、SIG・P210を選んでいた。
問題は、アンダーテイカーに絡んだ、三〇代半ばくらいのスーツ姿の男性だった。彼はM16A1突撃銃と銃剣。それと、ポケットには拳銃――ベレッタM92Fが差し込まれていた。
「私は、武器をひとつと言ったはずだけど……まぁ、いいわ」
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