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三〇代半ばくらいの男性以外に動揺が走った。約束を守った者が損をして、守らなかった者が得をするのかと。それなら、今から他に武器を取ってくると言わんばかりに、ドレッドヘアの男性が踵を返そうとした。
「大 丈夫。武器の数は関係ないから」
「だとさ。頭を使った者の勝ちだな」
三〇代の男は得意気な顔を忍たちに見せたが、次の瞬間、その顔が激痛を感じたように引きつった。
「関係ないのよ。自分に適合しない武器を持たない人間は、武器に喰われるのだから」
手に握ったM16A1から、そしてポケットの中のベレッタから、いくつもの発光する青黒い影が触手のように伸び、彼の身体に絡みついた。
影は彼の肉を貪り、咀嚼し、呑み込んでゆく。
影のドコに歯があり、舌があるのかは分からないが、下品な粘ついた汚らしい咀嚼音が、影のアチコチから漏れ聞こえてくる。
「がああああああああああああああっ!」
激痛に彼が悲鳴を上げるた時ら忍以外の三人の口からも、同じような絶叫が上がった。
恐ろしい肉を咀嚼する音だけが店内を支配し、アンダーテイカーは微笑みを浮かべたまま、そこで繰り広げられる惨劇を見つめていた。
忍は身動きすることも出来ず、その場に立ち尽くしていた。そして、その手に握った白鞘の短刀に目をやった。短刀から青黒い影は一本も出てこない。それどころか柔らかな光を放ち、忍の恐怖心を打ち払いはじめた。
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