4.蠍の火

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 オムライスがやってきた。マスターがウインクしてくる。  上にかかっているケチャップが、いつもと違ってハートマークになっていた。お心遣いありがとうございますという意味で、私もウインクを返した。  ただマスターなりの粋な計らいは、宗一くんには全く通じていない。 「おいしいな」  一口食べた宗一くんが驚きの声を上げ、さらにもう一口食べた。どんどん減っていく。良かった。早々にハートマークは潰れて消えたけれど、味は気に入ってくれたようだ。  私もスプーンが進む。久々に食べる『カムパネルラ』のオムライスは、とろけそうなぐらいおいしかった。自然と笑みになる。涙が出そうなほどだ。でも出なかった。私はそんなに簡単に泣くことはない。  私達はすぐに完食した。居酒屋でもそれなりの量を食べていたから無理かもしれないと思っていたけれど、なんてことはない、楽勝だった。満腹そうにお腹を擦りながら、宗一くんも満足気だった。 「宗一くん、コーヒー頼む?」  彼は二度頷いた。待ってましたと言わんばかりだ。私はコーヒーではなくとろける玉子プリンを頼んだ。まだ玉子を食べるのか。宗一くんは驚いている。玉子だけは三食食べられる。私の自慢だ。  コーヒーとプリンが同時に出てきた。豆から挽いた、コーヒーのいい香りに満たされる。プリンは舌に乗せた途端にとろけた。名前負けしないとろけ加減だ。  宗一くんは白いコーヒーカップを鼻に近付けて香りを楽しんでから、一口飲んだ。ワインのソムリエみたいだ。だけど気取っている感じはしない。とても自然だった。きっと普段からそうして飲んでいるんだろう。 「曽野田さんはどうして、僕についてきたの?」  ソーサーにカップを置いた宗一くんが私を見つめる。 「それは、僕に気があるんだろ、って言いたいの?」
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