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そのエピソードはマイちゃんから六回ぐらい聞いたので、今ではその場にいたみたいに情景を浮かべることができる。パパにしてはやるなと誇らしく思ったけど、七回目を聞かされるのはもう勘弁してほしい。
たぶんその時に、マイちゃんはパパに一目惚れしたのだと思う。
それを私に隠しているつもりらしいけど、マイちゃんの気持ちなど、私には全部お見通しだ。というか、パパといる時はパパのことばかり見つめているし、読書感想会の時も隙があればパパのことを聞いてくるし、時間を見つけて小学校では使わない高校数学の勉強をしているし、誰が見たってマイちゃんの気持ちなどすぐわかる。わかっていないのはパパぐらいだ。
私は、マイちゃんが大好きだ。ちょっとおっちょこちょいな所も、本の話になると興奮して身を乗り出し、テーブルの上のコップをひっくり返す所も、少し舌足らずで「うん」が「ぬん」と聞こえる所も面白くて好きだ。
色々考えているのにそれを表に出せずに悩むところも、子供が大好きなところも、本当は頼りになるところも、大好きだ。
だからパパと再婚すればいいのにと思って、無知な子供の振りをして色々気を利かせてきた。何度か家へ招待して御飯を三人で食べたし、近くの河原でやっている草野球の試合を見に行ったり、勉強のためと言ってプラネタリウムへ行ったりもした。
夏祭りも計画したけど、それは結局雨が降って行けなかった。
パパは理系人間の教科書みたいだし、マイちゃんは文系人間の鏡みたいな人だ。二人の会話は理論と感覚の平行線になってしまい、噛み合っているようで、いつも噛み合っていない。
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