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だけどマイちゃんは、パパの数学話をいつも楽しそうに聞く。パパも私が聞いてあげない分、耳を傾けてくれるマイちゃんの前では興奮したように数の話をする。
二人はお似合いだなと、それを見て、いつも思う。
私の大好きなマイちゃん、マイちゃんの大好きなパパ、あとはパパがマイちゃんを大好きになれば、大好きな三人が集まって楽しくなると思うんだけど。
「コーシ―・シュワルツ…。ド・モアブル…」と何やら呪文めいた言葉を呟くパパを見ていると、本当に自分の考えが正しいのかわからなくなってくる。
そもそも何でマイちゃんはパパのことを好きなんだろう?
私だったらもっと情緒溢れる人を好きになるのに。芥川龍之介みたいなラブレターを書いてくれる人だったらいい。もしくは、本当はないとわかっていても「銀河のお祭りへ一緒に行こう」なんて言ってくれる人がいたら、即好きになると思う。
パパは突然立ち上がって麦茶を飲み干し、私をちらりと見てから「証明するか」と叫んで裏の白いチラシとペンを取り出し、何やら数式を書き始めた。それは白鳥が筆を持って絵を書いているぐらい奇妙な姿に見えた。
マイちゃんは何でパパのことを好きなんだろう。
大人の恋は、よくわからない。
私はテストが近いことを思い出し、本を閉じ、代わりに国語の教科書を開いた。
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