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手に今でも持っている空のペットボトルを、顔の前に持って来た。
「っていうか、これ、誰が用意したの!」
寝ている間に知らない部屋にいる。当然、ミヌアはこう思った。
「あぁ~、夢を見てるんだ」
(しかも、さっき起きたわけだから、夢の中で別の夢を見てた。
もう一回寝たら、起きれる?
よし、寝よう!)
どこか勘違いしたまま、ミヌアはペットボトルを持ちつつ毛布とシーツの間に足をすうっと入れ、体を横たわらせる。
「おやすみなさ~い」
睡眠の体勢を取った。目を閉じ、掛け布団を両手でつかみ、自分で寝息までご丁寧につけて。
「ぐー、ぐー……」
10秒経過。今まさに目覚めたように、ミヌアは目を閉じたまま上体を起こして、
「おはようございます~」
両手を頭の上へ持ち上げ、ペットボトルを両端からつかみ、既に空のため容器が歪み、グシャグシャという音を豪華な部屋に作り出した。
万歳しているみたいなポーズのまま、右目だけうかがうようにそうっと開ける。
「……ん?」
だが、相変わらず、自分の貧困層の象徴ともいうべき服とは、逆立ちしても釣り合わない裕福で豪華な部屋が都合よく消え去るはずもなく、ペットボトルで自分の頭をポンポン叩きながら、珍しく難しい顔。
(起きられないね)
打撃という刺激でボケている頭に正常という電流が走り、今していたことがおかしかったことに、何百年前から来たみたいに遅れに遅れ今頃気づいた。
(っていうか、理論的に間違ってる!
2重に寝てるわけだから、もう一度起きないといけない……。
寝ちゃいけない!)
女性らしさを強調させるピンクを基調とする部屋で、不可能に近い方法を模索し始めた。
(起きられない夢から起きる方法?
どうやって?
ん~……?)
人の3大欲求、睡眠を自身で食い止めるという、太陽を西から東へ動かすようなことを実行し始めた、ボケという名の強引さを持って。ミヌアはペットボトルをシーツの上に転がし、正座をした。
(よし、ここは十字を切って……)
右手の親指、人差し指、中指を合わせ、額、胸、右肩、左肩の順へ動かし、ミヌアはパーカーの襟元から、
(ミザリオを出して……)
慣れた感じで銀のチェーンをすうっと抜き出し、中から出て来た十字の形をしたものを、
(握って……)
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