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「お前をこんなところで死なせはしないさ。終戦のその先を一緒に見てもらいたいからな」
「…余計なことしないでください。あいつは母さんの仇だったのに」
笑みを浮かべるスタットを見てロアは安堵の息を漏らすとともに強がりを言った。
「そういうセリフは勝ってから言うんだな。さて、休憩してる余裕はないぞ。ここは戦場のど真ん中だ」
スタットはロアを起こすと再び前線に駆け出す。
「流れを見る限りどこも押し込まれてはいないようだ。左翼のシルヴァ隊長も奮戦している。やはりうちの隊長は伊達ではないな」
「やれそうですね!このままインセンスを畳み掛けましょう!」
スタット隊は進軍を続けた。
ーーー
一方でグリーフ隊長、グランとインセンス将軍、ギーガの闘いはまだ続いていた。
「なかなかやるじゃねぇかギーガ。身のこなしがうめぇ…」
「貴様こそ腕が落ちたか?前に戦ったときはこんなものではなかったはずだが…」
「抜かせ。てめぇが何か企んでそうだから様子みてんだよ。避けるだけが取り柄の腰抜けが。俺を殺す気あんのか?」
疑問を投げかけるグランに対し、ギーガは薄い笑みを浮かべる。
「…勘づいていたか。ただの馬鹿だと思っていたが、腐っても隊長だな。…そう、俺の仕事はあくまで貴様の足止めだ。こちらにも相応の準備があってな。邪魔されては困るんだ」
「相応の準備…だと?」
グランが前線を見渡すと順調に攻めていると思われていた状況が違って見えてきた。
敵兵は押されているように見せかけて誘き寄せるように後退していたのである。
(まずい…!何かが起きやがる…!!)
危機感を覚えたグランは咄嗟に叫ぶ。
「おい!!てめぇら下がれっ!!!」
「…もう遅い」
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